2005年06月25日
読みやすくても薦めづらい小説について
ノーベル文学賞作家であり現代フランス文学の代表者でありヌーヴォー・ロマンの作者であるクロード・シモンの一番新しい小説『路面電車』を読了。シモンの小説をわずか二日で読み終えたのはある意味快挙というかびっくり。読み始めたときはたった100ページ程度の中篇でシモンの小説にしては短いし、内容的にもさほど難しくないし、クロード・シモン入門に最適かしらん、とか思ってたんですが、何かこれ、全然シモンらしくないんですよね。話の内容は、高熱かなんかで病院に入院している老人が、少年時代に乗った路面電車について思い出すという感じで、少年のころの思い出と、現在の入院生活の断片が交互に現れてくるといった感じ。
シモンの小説といえばタペストリカルな描写とか重層的な歴史や戦争や暴力や性交の幻惑するテキストが特徴なんですが、今回のやつは何かかなり落ち着いてるというかしっとりした雰囲気。おなじみの息の長いテキストはあるものの、比較的パンクチュエーションはまともだし、それなりに読みやすい断片の積み重ねになっている。もちろんそれでも普通に面白いわけですが、黄昏過ぎてて初心者向けという感じはしません。まあシモンもいい年というか、この作品を書いたのは89才とかなので、さすがに息切れしたかなあ、という雰囲気はあります。
シモンの代表作はやはり『フランドルへの道』でしょうね。さっき本棚をあさったのに全然見つからないんですが。あとは『三枚つづきの絵』なんかもよいですね。なんか、シモンの小説は絵画の雰囲気に近いです。ほとんど変質狂的な細部のリアリズムへのこだわりとか、ダイナミズムの表現の仕方とか。
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