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2005年12月19日

サヴァンと記憶の構造について

x51.orgの九千冊の本を暗記する男 ― サヴァン症候群とはという記事。サヴァンというのは、精神とか重軽度の障害がありつつも、記憶力やら絵画やらに人並みはずれた才能を発揮するような人のことですね。確か、10年くらい前に、サヴァンに関する本を読んだことがありますが、その本ではサヴァンは記憶力が優れているのではなくて、むしろ忘れる能力が欠如しているのだ、とか書いてましたね。一日に起こることをすべてそのまま覚えていても意味がないので、普通はテキトーにかいつまんであとは忘れるわけですが、サヴァンには欠損があるので忘れることが出来ない。だからすべて覚えたまま、ということになる。まあ、実際どうなのかは、私は知りませんが。

以前にも何回か紹介したことがありますが、受容美学の代表的な理論家にヴォルフガング・イーザーという人がいます。彼の代表的な著作に『行為としての読書』というのがある。そこで、彼は19世紀的な写実小説についてこういうようなことを書いています。19世紀的な小説というのは、物語の筋があり、そしてメッセージがこめられている。そのようなメッセージや筋立てというのは、「生活から異質性を消去し、意味を抽出する」ことによって成り立っている。つまり、普通の人間の生活を朝から晩まで逐一書き込んでも話らしい話にはならないので、話にするためにはその中から重要なところだけ取り出して纏め上げる必要がある、ということです。そして、上のサヴァンの話で述べたように、それは人間の「記憶構造のパラダイム」でもある。人間の記憶も、一日の生活の中から一部を取り出してつなぎ合わせることで、ひとつの記憶のまとまりとして成立している。

イーザーは『ユリシーズ』を例に出して議論していますが、逆に、一日に起こったことをどんなくだらないことでも逐一書き込めば、それはテクストの準拠枠を読者に意識させることになる、と。

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